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Habari za Dar es Salaam No.146   "Operesheni Tokomeza Ujangiri" ― 密猟一掃大作戦 ―

根本 利通(ねもととしみち)

 昨年末から今年前半にかけて、タンザニアで大きな問題となっていたのは政治的には憲法改正問題だろう。これは現在も進行中で、民衆の声を背景にした与野党の駆け引きが厳しい。来年の総選挙、政治体制に直結するからだ。それ以外で社会的に話題になったテーマはいくつかあるが、ここでは象牙の密猟問題の経緯をまとめてみたい。

📷 大作戦中止の第一報 『The Citizen』2013年11月2日号  「密猟一掃大作戦」が鳴り物入りで始まったのは、2013年10月4日であった。象牙の密猟の問題がかなり話題になっていて、東アフリカ特にケニアとタンザニアからの密輸出が非難の対象になっていた。昨年、タンザニアでは1日に30頭、年間1万頭のゾウが殺されていると言われていた。ボツワナと並んで最大を誇るタンザニアのアフリカゾウ生息数が急激に減少している。

 ゾウの生息数の推定は、その時代時代で統計を取った方法、調査者が違うし、古い時代の統計はあくまでおおざっぱな推計に過ぎないだろう。また近年の調査でもセスナ機で飛んで、個体を勘定できた数字から単位面積当たりの生息密度を出し、そこから全体の数字を出すのだから概数なのだろうが、最近は精密度が上がっていると聞く。あくまでも参考だが、新聞報道(2013年11月18日付『The Citizen』)によれば、1961年独立時には35万頭いたゾウが、1977年には18万4千頭、1987年には8万頭。1989年には5万5千頭まで減少したという。

 これはタンザニア内の最大(アフリカ大陸内でもおそらく最大)の保護区であるセルー保護区におけるゾウの生息数の減少が大きい。そこで、1970年代後半からの密猟の蔓延で急激に減ったゾウを守るために、ドイツ(フランクフルト動物園協会とGTZ)の調査と支援に基づいて、1988年からOperation Uhai(生命大作戦)が始まり、タンザニア全体のゾウの生息数は10万頭台に回復し、2000年ころには13万頭台で安定したと言われた。ここら辺の経緯は、報告書『アフリカの野生の心』に詳しい。しかし、2009年には再び10万頭まで落ち、2012年は7万頭という数字がささやかれていた。

 2012年にCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=通称ワシントン条約)に、押収したりした象牙の在庫101トンを反密猟対策の資金に充当するための売却を申請していたタンザニア政府としては、急増する密猟取り締まりの断固たる姿勢を見せる必要があったのだと思われる。しかし、バンコクや香港でタンザニアから密輸入されたと思われる象牙が大量にコンテナから発見され、その船会社の関係者に与党CCMの幹部がおり、そのの関与が4月の国会で野党議員から指摘され、それを名誉棄損で訴えるという騒ぎもあった。

📷 ザンジバル港で押収された象牙を視察する大臣 『Daily News』2013年11月14日号  さて、今回の「密猟一掃大作戦」が批判を浴びて中止になったのは11月1日であった。おりから開かれていた国会で10月29日「密猟大作戦は重大な人権侵害である」という強い批判を与党の国会議員から浴びたのだ。マニヤラ州で密猟者と疑われた夫が行方不明になり、残った妻が死体で発見され、その犯人が警察・軍・公安・公園レンジャーなどで構成されたパトロール隊であると報道された。そしてこの事件以外にも、殺人・傷害・逮捕・家の放火、家畜の押収などが明るみに出てきた。

 そしてこの背景として、10月4日にアルーシャで行われた世界15都市を結んだ「グローバル・ゾウ行進」に参加したカガシェキ天然資源観光大臣が「密猟者にはその場で対応する」という発言が問題視されたのだ。法務長官が「いかなる大臣もその場で射殺する命令を出す権限はない」と声明。与党国会議員は「国家公務員、大臣、国会議員の関与が噂されているのに、その名前を出さずに普通の国民を苦しめているだけだ」と非難した。結局、殺された者13名(+パトロール隊にも6名被害者)、逮捕された容疑者1,030人、押収された象牙104本、銃器1,597丁、家畜数千頭という結果で、「密猟一掃大作戦」は無期限停止に追い込まれた。

 「大作戦」が停止された翌日(11月2日)、カガシェキ大臣自身が乗り込んで、ダルエスサラーム市内の中国人の住居から706本の象牙(54億シリング=3億3750万円相当)を押収した。そしてその中国人3人は8日には起訴され、中国大使館は「中国国民はタンザニアの法を遵守するように」という声明を出した。その翌週(13日)に今度はザンジバル港で中国向けのコンテナから象牙1,000本以上が見つかった。貝を入れたプラスチックバッグのなかに隠されていたという。こう矢継ぎ早に発見されると、今まで分かっていたのをカガシェキ大臣が批判をかわすために流出させたのではないかと勘繰りたくもなる。

 11月25日のスワヒリ語紙に、キゴマ州など4州にまたがるキゴシ・モヨウォシ保護区での反密猟パトロールの結果起こったことの記事が出た。タイトルは「カガシェキの作戦は牧畜民を貧困に落とした」である。カゲラ州の牧畜民の88頭の牛が保護区のなかでレンジャーに殺されたという。殺された土地の管轄である県知事は当惑しながら、レンジャーが牧畜民から賄賂を取っていることを認めている。しかし保護区のマネージャーは、保護区のなかに家畜を入れた牧畜民は罰金を払うか、それに応じなければ起訴されると答える。現実には牧畜民は保護区内に家畜の群れを入れていて、レンジャーはそれを見逃す代わりに私服を肥やしている状態なのだ。牧畜民は家畜を殺すレンジャーの残酷さ、横暴に憎悪の気持を持つ。こういう状態のなかで「密猟一掃大作戦」を実施し、武器行使のお墨付きを与えたというのが実態だろう。

 その後しばらくして、国会の調査委員会の報告書が発表され、12月21日に責任者として4人(天然資源観光、畜産水産、内務、国防)の大臣が更迭された。大臣たちは人権侵害の罪で訴追される可能性も云々された。しかし、これで一件落着というわけにはいかない。そもそもこの大作戦が開始されたのは、タンザニアにおける密猟があまりにも蔓延していることに対する国際社会からの批判に応えるためだったはずだ。2012年の観光収入がケニアを抜き、かつ2013年にはタンザニアの外貨収入源でも金輸出を抜いてトップに立ったというドル箱の観光産業である。

📷 大作戦中止の背景の報告 『Mwananchi』2013年11月25日号  タンザニアの旅行業者の組合であるTATOは、大作戦が中止になった後の11月19日には声明を発表し、「反密猟キャンペーンの停止は間違いだ。密猟者の勝利に終わらせるわけにはいかない」とキャンペーンの再開を訴えた。また、自ら主催する「ゾウの写真コンテスト2014」を内外の保護団体に協力を呼び掛けた。あまりタンザニア的とは思えない「国家権力による人権の侵害」によって中止されたキャンペーンが、やはり西欧的な「大自然の保護」の思想によって再開を呼びかけられているという、ややわかりにくい構図になった。

 2014年新年冒頭の挨拶でキクウェテ大統領は「密猟一掃大作戦の近いうちの再開」を声明した。1月8日、天然資源観光副大臣(のち大臣に昇格した)ニャランドゥは、21人のワ―デン(監督官)を密猟に関与したと停職にした。しかしこれは省の幹部とか、関与が噂される国会議員の名前は出てこないので、トカゲのしっぽ切りではないかと疑われたが、2月には野生動物局長とその次長を解雇した(しかし、4月末には公務員保護の規定でひっそりと復職させたという)。

 外圧もかかってきた。一つは象牙などの密輸が反乱軍・テロリストの資金源になっているという批判である。1月に国連安保理でコンゴ(民)と中央アフリカの反乱軍の国外資産の凍結などの制裁決議が出た。タンザニアなどからの象牙の密輸出に対して、アルシャバーブと関連づけ、タンザニアも国連の制裁の対象になりかねないという言説も散見した。2月8日の英国の新聞『Daily Mail on Sunday』でタンザニア政府が密猟取り締まりに及び腰なのは、与党の幹部とビジネスマンが組んでやっているからだと書かれた。タンザニア政府はもちろん強く否定したが、さらに11日今度は英国のテレビITVが、中国人のレポーターに象牙のバイヤーを装わせてアルーシャに土産物屋を訪問させた。最初、象牙のブレスレットなどの小物を裏部屋で提示されたが、要求するとホテルの部屋まで象牙を持ってきたという。それをが隠し撮りした映像が流されたらしい。

 ただ、2月13日にロンドンで開かれた世界野生動物密貿易サミットに、キクウェテ大統領とニャランドゥ大臣が参加することが決まっていたから、タンザニアには大きな痛手だったろう。ニャランドゥは訪英中にDaily Mail社を訪ねてタンザニア政府の努力を説明した。キクウェテはCCNテレビの取材に応じ、そのなかで「タンザニアは備蓄してある100トン以上の象牙を燃やす(廃棄する)ことはしないのか?」と質問され、積極的な返事はしなかった。ケニアのモイ大統領(当時)がデモンストレーションとして、備蓄象牙を燃やしたことがあった。

 おそらくこの2月のロンドン訪問で、タンザニア政府は巻き返しを考えたのだろう。件の『Daily Mail』紙の記者を招き、タンザニア政府のゾウ保護の努力を伝えようとした。その記者はタンザニア政府の押収した象牙の備蓄倉庫とセルー保護区に案内された。しかし3月23日に発表された新たな記事は、タンザニア政府の期待を裏切るものだった。「1億5千万ドルの価値を持つ押収された象牙は人間の欲望の神殿であった」と書き、50人ほどのよく組織された密猟団が触れられないのは支配エリートと親しい関係のためという論議は撤回しなかった。タンザニアの新聞は「ホスピタリティはさらなるダメージとなって返って来た」と書いた。

📷 英国のプレスと会うタンザニア観光大臣 『The Citizen』2014年2月14日号

 これはタンザニアだけの問題ではなく、お隣のケニアでも大問題になっている。元ケニア野生動物公社(KWS)の長官で自然保護運動家のリチャード・リーキーがキャンペーンを張っている。1kg850ドルの象牙が、2011年にはアジアの市場に3,100万ドル密輸入された。自動小銃、夜間ゴーグルや牙や角を切り落とすためのチェーンソウで重装備の密猟団で、厳重に警備されたクロサイなどもやられている。その中核にいるのは20~30人のグループで、彼らの名前は表面に出てこない。「重大な危機である」とリーキーは訴え、元部下であったKWSの長官が「我々は闘いに負けてはいない」と反論するという事態があった。

 セルーなどで行われているスポーツ・ハンティングも、これだけ密猟が横行しているのにお金を取ってゾウを殺させていいのかという議論は当然起きる。4月4日にアメリカ合州国の魚野生動物公社(USFWS)が、タンザニアとジンバブウェからのアメリカ人のハンターの勲章であるトロフィーの持ち帰りを禁止した。早速米国国内では複数のスポーツ・ハンティングのクラブ、協会から「スポーツ・ハンティングは多くの雇用を生み出し、資金的にも密猟防止に貢献しているので、この禁止は一方的でかつ誤りである」という声明が出て、4月21日には国際サファリクラブ(SCI)というスポーツ・ハンティング促進と自然保護を目指す団体が米連邦裁に差し止めの訴訟を起こした。備蓄象牙の処分とかスポーツ・ハンティングの是非など、外国のイニシアティブではなくタンザニア人の判断が出ることが望ましいと思う。5月になってニャランドゥ大臣がアメリカによるトロフィー禁止に対する反対の声明を出したが、抗議はしていないようだ。

 私はこの象牙の問題を真剣に考えたことはなかった。1970年代半ば、ダルエスサラームの通称マコンデ村で、象牙の彫り物を見て美しいと思ったことがあった。かつての西欧でのピアノとか、日本の印鑑のような実用品としての需要もあったろうが、基本的には象牙は紀元前から贅沢品として交易されてきた。ローマ帝国やインド、中国の王侯貴族たちによる需要だった。現在の需要の最大の部分は中国の急激な経済成長によるステータスシンボルとしての象牙製品だという。これは何とかなるのではないか、市場を潰してしまえばいいと思うのだが、それは素人考えなのだろうか?

 生物としての人間の生存条件を守るためにも、多様な生命が共存できるように、自然環境の破壊・生態系の変化はできるだけ阻止した方がいいだろう。だから自然保護団体の主張は絶対的な正義に見える。例えば、キリマンジャロ山の森林や雪、セレンゲティ大草原のゾウを守るというのは大義のようで、正面切って反対するのは難しいし、募金やボランティアも集まるだろう。そこに共生する人間がいることを忘れてはいけないのだが、ややもすると捨象されたり、第二義的に扱われたり、下手すると犯罪者扱いされたりすることがある。岩井雪乃さんの「自然の脅威と生きる構え」タンザニア・ポレポレクラブHPなどを読むとその問題に出くわす。

 セレンゲティもキリマンジャロも、タンザニアが世界に誇る自然遺産だ。その貴重な大自然を守るために、人間を排除しようとした。セレンゲティが国立公園に指定された1951年以前には、そこにはマサイ人などの遊牧民や、イコマ人などの農牧狩猟民が、大自然の恵みを生かしながら共存していた。またキリマンジャロ山は農耕民チャガ人の聖なる山(西麓にはマサイ人が進出していたが)で、その森林の恵みを利用していた。マサイの人びとは東のンゴロンゴロ自然保護区やロリオンド地区に押し出され、イコマ人たちは西の国立公園外に移住させられた。キリマンジャロ国立公園に指定された森林からは薪を採ったり、家畜の飼料となる草を刈ることが禁止された。そういった形で守ろうとする自然は、ある意味では人工的な大自然なのだ。

📷 象牙市場の最末端 『The Citizen』2014年2月4日号  このゾウの密猟反対キャンペーンの最中でも、タンザニア人からの投書では「国際的な恥だ。ゾウを守れ」という意見もあったが、「私は生まれてからこの方、村でゾウから恩恵を被ったことがない。ゾウの方が人間より大事にされるのはおかしい。発展のために税金を払っているのは私たちなのに。ゾウなんかみんな死んでくれたらいいのだ」という投書もあった。これは実は本音だろうと思う。こういう意見は複数のタンザニア人から聞いている。

 自然保護の発想では、野生動物を含めた自然を保護して観光客に提供し、その利益を地元へ還元するということになる。狩猟することも含めて動物と長く共存してきた人たちが、国立公園・保護区の外に追い出され、伝統的な狩猟をすると密猟と見なされ処罰を受ける。罰金を食らったり、投獄されたり、運が悪いと殺される。観光収入の利益はなかなか地元には届かない。1990年代には観光収入の50%はその保護区のものになり、その半分(25%)は地元に還元され、小学校や診療所などの整備に充てられていた。1998年に野生動物管理地域(WMAs)の設立が奨励され、その地域に進出した観光産業(ロッジやキャンプ、ツアー会社)から村人たちが直接収入を得られるようになった。

 しかし、2009年に新たな野生動物保護法が導入され、旅行業者の支払う許可料などはいったん中央政府に納められ、その後税金や経費、地方政府の取り分などを差し引いて、地元のWMAsに下りてくることになった。その支払いは非常に遅れてされるし、何が差し引かれたのかも不透明で、地元の取り分は大幅に減っているという。従って動物保護に対する地元の熱意はそれほど高くないのが一般的である。

 3月17日の『Mwananchi』の報道である。「争いはセレンゲティの野生動物と人間との友情を消した」と題する記事で、セレンゲティ国立公園に隣接するマラ州ブンダ県クンズグ村400世帯の取材であった。昨年、ゾウの被害は48世帯で2億1200万シリングに上ったという。約1,300万円で1世帯当たり28万円ほど、この数字が本当なら被害は大きい。「ゾウは実りのシーズンを知っている」と村人は言う。またリカオンによる子牛やヤギの被害も157頭あったという。TANAPA(タンザニア国立公園)の隣接共同体との友好プロジェクトのマネージャーも、タランギーレ国立公園の境界線の内外で起こった、野生動物と人間の双方の被害の数字を挙げており、また乾季の水の利用問題の存在も指摘していた。

 タンザニアの人口の増加率は直近の国勢調査(2012年)によると2.7%で、過去10年間に1,050万人増えた。このままいくと26年後には倍になり、2050年には1億人を超えると言われる。タンザニアは人口密度が51人(2012年)と比較的低く、かつ農耕可能な土地も多かったので、あまり厳しい土地争いは発生してこなかった。しかし、近年農耕民と遊牧民との対立が頻繁に伝えられるようになった。また近隣のモザンビークやエチオピアほどではないにせよ、外資による土地収奪の動きも顕在化してきている。国土の28%をなんらかの形で保護区域に指定してきた、ある意味では野生動物に優しかったタンザニアの政策が、人間の人口の増大にこれからどう対処していくのだろうか。

📷 セルーのゾウ、いつまで 『The Citizen』2014年2月28日号

 象牙の密猟の最大の舞台は広大な南部のセルー保護区である。2013年10~11月の調査ではセルーーミクミ生態系のゾウの生息数は13,084頭と発表されている(ちなみに同時期のルアハールングワ生態系は20,090頭)。1976年の11万頭、80年代の密猟で3万頭まで大幅に減少したが、「生命大作戦」で7万頭まで回復していたのにである。国土の6%近くを占め、人間が排除されている地域には、ウランやレアメタルなどの天然資源が眠っているとされる。また、タンザニア最大の河川ルフィジ川が貫流しており、水力発電の可能性を高く秘めている。既に南西部ではウラン開発のために一部が保護区から外された。セルー保護区はユネスコの世界自然遺産であるがゆえ、境界の変更には厳しい制限があるはずなのだが、現状のまま維持できるとは思えない。

 しかし、ニャランドゥ大臣は何とかしようと努力しているようだ。55,000平方キロ、九州と四国を合わせたくらいの面積にレンジャーは数百人しかいないはずだ。その人数で武装した密猟者と闘わないといけない。2月27日の記者会見で、セルー保護区の改組を発表した。ほかの動物保護区とは違えて半独立組織体とし、今まで47ブロックに分かれていたものを、8つのゾーンに組織替えし、それぞれのゾーンの責任者を任命した。セルーはあまりにも広大で観光収入だけでは維持費を賄えないので、高額の料金を取ったハンティング・サファリを継続してきた。私の知っている2000年代前半は、スポーツ・ハンティングによる収入が普通の観光収入の10倍もあった。このハンティングを止めて、外国からの資金援助に頼ることになるのだろうか。

 上記は新聞報道による経緯を中心とした私の個人的な感想である。新聞報道というのはどうしても外向き、つまり国際社会(西欧北米)とタンザニア政府との駆け引きが中心になり、タンザニアの普通の民衆の声は取り上げられにくい。幸い日本人の研究者である岩井雪乃さんの著書があるので、補充してほしい。外国人である私としては、ゾウを含めた生態系の多様性が維持され、世界に冠たる野生の王国としてタンザニアが残り、観光収入ができるだけ一般の民衆に分有される形で行ってほしいという希望がある。また私たちの孫の世代まで、サバンナを悠然と闊歩するゾウの群れが残ってほしいと願う。しかし、それはタンザニアの民衆が選ぶことなのだろう。新自由主義経済・グローバリズムという思想を選択するか転換するかどうかも含めて。

 4月に入ってこの関係の記事はぐっと少なくなったが、5月に入ってタンザニア政府の対外宣伝作戦が功を奏したか、内外からの援助が続々と報道されるようになった。ドイツのフランクフルト動物園協会、UNDP、タンザニアのハンティング協会、セルー保護区の境界変更してウラン採掘権を握ったオーストラリアの会社などからである。密猟取り締まりパトロール用の4輪駆動車の寄贈やヘリコプターの購入資金支援などである。さらに950人のレンジャーの増員を発表され、ゾウを追い払うためのミツバチ利用作戦も議論されている。「密猟一掃大作戦」が再開したという公式声明はまだない。

☆参照文献・統計☆  ・『Mwananchi』2013年5月1日、10月30日、11月3日、6日、14日、25日、12月22日、2014年1月16日、2月10日、    3月11日、17日、5月4日、5日、9日、14日、15日号  ・『The Citizen』2012年10月11日、22日、2013年10月20日、30日、11月2日、6日、9日、14日、18日、12月22日、    2014年1月9日、2月4日、12日、14日、18日、22日、27日、28日、3月24日~27日、4月16日、24日、    5月7日、10日~12日、14日、15日号  ・『The Daily News』2013年11月14日、12月5日、21日、2014年1月14日号  ・岩井雪乃『参加型自然保護で住民は変わるのか』(早稲田大学モノグラフ、2009年)  ・岩井雪乃「自然の脅威と生きる構え」(赤嶺淳編『グローバル社会を歩く』、新泉社、2013年)  ・岩井雪乃「自然保護への抵抗としての内発性」(大林稔ほか編『新生アフリカの内発的発展』、昭和堂、2014年)  ・Tanzania PolePole Club(タンザニア・ポレポレクラブ)ウェブページ:http://polepoleclub.jp/

(2014年6月1日)

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