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Habari za Dar es Salaam No.2   「アフリカ・タンザニアの楽器」

根本 利通(ねもととしみち)

  ダルエスサラームの大雨季はようやく明けました。今は涼しく快適で緑も豊かな美しい時季です。傷んでいたダルエスサラームの道路もグレーダーがかけられ、走りやすくなっています。ただキルワ、ムトワラなど南部へ向かう幹線道路が走れるようになるには未だ時間がかかるでしょう。

  先日、日本から小冊子とビデオが送られてきました。浜松市楽器博物館で、今年3月26日~5月6日の間に開かれた特別展「アフリカの楽器」図録と「フィールドワーク報告書Vol.4:アフリカ・タンザニアの楽器」とその調査の時に撮影されたビデオ3巻です。小冊子を開くと、素晴らしい写真が含まれていて、目を奪われてしまいました。ダルエスサラーム便りと言いながら、日本からの便りを紹介するのも何ですが、縁あってこの仕事をお手伝いした者として、少し触れて見たいと思います。

📷  浜松市楽器博物館の学芸員の方2人がタンザニアに調査に見えたのは2000年の11月でした。アフリカで伝統音楽というと、やはり西アフリカで、セネガル、マリ、ガーナ、ナイジェリアといったところが、多様な楽器を駆使した多様な民族音楽を誇っています。楽器博物館の方々も最初はガーナへ行こうとして、政治情勢などで断念して、「安定している」タンザニアに見えたとのことです。まぁケニア、タンザニアといった東アフリカは、遠いアフリカの中では、地理的にも心理的にも少しは近いでしょうかね。

  私もタンザニアの民族音楽について造詣が深いというわけではないので、自分の好きな音楽ーゴゴとマコンデを紹介しました。更に知人のモロゴロの村(キンゴルウィラ村)の成人式やザンジバルのターラブというアラブ風の音楽も取材されました。そのビデオに流れる音や踊りを伝えるのは難しいのですが…。

  ゴゴの有名な音楽家にはフクウェ・ザウォセがいます。しかしその時は、ちょうど一族の若者を率いて日本公演だったので、タンザニア在住の長い、日本のNGOの駐在をされていたTさんにお願いして、NGOの植林サイトの近くのマジェレコ村を紹介して頂きました。仕事の終わった夕方から深夜にかけてお酒を飲みながらンゴマ(太鼓と踊り)が催されるのが普通ですが、今回は撮影のため昼下がりから夕方にかけてやっていただきました。

  ゴゴの太鼓は女が打ち鳴らすムヘメというンゴマが売り物です。10人ほどの女が股に挟みながら打ち鳴らす大小の太鼓に、2人の男がカヤンバというがらがらを鳴らしながらユーモラスに掛け合います。またイリンバやゼゼ、ンドノといった弦楽器も交えたオーケストラでは男女20人以上が入り混じっての大迫力です。日本でザウォセが公演する時は精々6人までですから、この迫力は伝わりません。ゴゴの住むドドマは公称タンザニアの首都といいながら、降雨量の少ない半乾燥地帯で、シコクビエ、キビ、モロコシといった主食で比較的貧しい農村地帯です。赤茶けた大地で周辺の緑も少なく、バオバブの大樹がぽつねんと立つ背景の村で、乾いた音が響き、村人は生き生きと踊り、はやし立てます。

📷  マコンデの村はバガモヨ芸術大学の踊りの先生のマリーさんの故郷の村を紹介いただきました。ムトワラからネワラの方に入ったムニャンべ村です。ドドマとは異なり、緑豊かで土地も黄色くなっています。ここでは事前に準備を周到にしていただいたおかげで、その地方のマコンデの有名な踊り手のグループが集まり、一種のマコンデ踊り大会となったようです。歓迎の子どもたちのキレのいい踊りから、女たちの高音の歌、またマコンデ独特の仮面をつけた踊りが次々と披露され、村人たちは興奮していきます。踊り子たちはお酒を飲んだり、ある者は大麻を吸っているのではないかと思わせるように目がトロンとしています。私がマコンデの踊りを一番最初に見たのはダルエスサラームのお祭りのときでしたが、その時は男女が腰をぴったり付けて揺すり、そのセクシーさというか、露骨さに圧倒された思い出がありますが、今回はありません。それが昼間の撮影のためか、あるいは商売用でないためなのかは分かりませんが、おそらく前者だと思います。

  実はマコンデの村へは私は行ったことはありません。リンディ、ムトワラと駆け足で通りすぎただけです。マコンデ彫刻だけでなく、踊りにも非常なエネルギーを示すこの民族には興味を持つ人々も多いようです。マコンデの村を訪ねてみたいという意欲の湧くビデオと報告書でした。

  最近は日本でもアフリカの民族音楽が紹介されるようになり、現にザウォセなどは日本に5~6回は行っています。彼は高度な技術で伝統的な曲と創作を巧みに奏でます。欧米日本からバガモヨ芸術大学に楽器や踊りを学びに来る人もいますし、そこでは洗練された踊りも教えています。それはステージで演じられると素晴らしいのですが、タンザニアの田舎で、例えばマハレでトングウェの人々が見せてくれた、泥臭くて稚拙な感じのする、だけど朝までンゴマをたたき、ヘロヘロになって踊りぬき、またものに憑かれた状態になって湖に飛び込むようなエネルギーは感じられません。やはりそれぞれの土地で、その土地のの人々によって演じられるンゴマが一番なのかもしれません。そう言ってしまうと、普遍的な芸術とは距離が出てしまうのですが、ヨーロッパの芸術観に影響されていないものほど素の魅力があるのも事実だと思います。生のタンザニアの音楽を感じるためには、カリブ、タンザニアです。

写真は「フィールドワーク報告書Vol.4:アフリカ・タンザニアの楽器」より。

問い合わせ先: 浜松市楽器博物館 「図録」「報告書」各500円(税込)、「ビデオ」非売品 〒430‐7790 静岡県浜松市板屋町108‐1 TEL:053‐451‐1128、FAX:053‐451‐1129 http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jo/gakki/

(2002年6月1日)

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