根本 利通(ねもととしみち)
謹賀新年。2004年明けましておめでとうございます。世界が平和であるように、皆様方のご多幸をお祈り申し上げます。
昨年末、ベルギーのブリュージュへ行って3泊ほどのんびりしてきた。ブリュージュは13~15世紀に栄えたハンザ同盟の商都で、 運河が土砂で浅くなり栄華の止まった中世の都市という触れ込みだった。12月という観光客が少ないだろう時期にも、マルクト広場の周りは観光客を当てこんだレストラン、チョコレート屋、土産物屋だらけで、日本人の団体旅行もいたし、完全な観光都市だった。自分が観光客だから文句はないのだが、80年代前半の社会主義時代の ザンジバルと、自由化後の現在の観光志向のザンジバルの変容を目の当たりにしていると、旅行業に携わる人間としてやや忸怩たる気持ちに陥る。
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JATAツアーズという旅行社を始めてから丸5年経ったが、考えたら家族旅行らしい旅行をしたのは初めてのような気がする。タンザニア国内を4泊5日くらいで旅行したことはあったが、それも極めて稀で、家族と一緒に国外旅行というのは久しぶりである。旅行社を始めたのは旅好きが嵩じたからという部分もある のだが、自分の「旅心」をなくしてしまうと、持続するエネルギーがなくなる。そういう意味からはたった5日間だったが、無理して(繁忙期直前なのに)出かけてリフレッシュ出来てよかったと思う。
そこですぐ次の旅の目的地を探す。1週間以上オフィスを空けられないから、近場で選ぶと、いくつか候補はあるのだが、今行っておきたいのはダマスカス(シリア)である。現存する最古の都市である、ダマスカスに歴史を知らないブッシュマンが爆弾を落とさないうちに行っておきたいという発想である。ダルエスサラームからカイロもしくはドバイ経由が普通で、少しひねってサナー(イェメン)というのも魅力だ。サナーにもダマスカスにもダルエスサラームでの知人が住んでいる。
とここまで夢を広げてきて、ふと躓く。バグダッドで韓国人や日本人が襲われる。自衛隊が出かける。サダム・フセインがいかに悪逆な独裁者だったろうと、侵略を受けた側の傷は簡単には癒えない。日本も韓国も侵略者に荷担していると見られてもやむを得ないし、今はもう行けないのだろうか…、ガダフィが自己保身のために英米に無条件降伏したのを見ても、そう感じる。
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モンバサが危ないとか、ザンジバルが危ないとか、つまりイスラム圏は危ないようなことを言う。シーア派もスンニー派も、サウジの王家も原理主義も一緒くたに、イスラムをまとめて「文明の衝突」論のようなことを言ったり、イスラムが何となくテロリズムの代表で、キリスト教が民主主義を代弁するような潮流を作ろうとする。こういった詭弁は為にしているので、気をつけないといけないと思うが、マスコミの支配力は強く、「何となく危険」という感覚になって、旅行もしづらくなる。力によって他国の利権を支配するのを良しとするするような19世紀の植民地主義が形を変えて登場しても、もう民衆はそう簡単には抑え込めないだろう。
今アメリカが強引に推し進めようとしているのは帝国主義ではなく、後世「新々植民地主義」と言われるようなものなのだろうか。
世界の多様な文化、民族が平和に共存できることが旅の楽しみを保証するのだと思う。商売柄ではないが、強く2004年に願うことである。
(2004年1月1日)
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