根本 利通(ねもととしみち)
ダルエスサラームはまだ依然として涼しく、快適な時季が続いている。ただこの乾季にしては結構強い雨が降り、我が家の周りの道にも水溜りがなかなか絶えない。エルニーニョの影響という話だが、このまま小雨季に突入してしまうのかどうか、やや不安な気持ちである。
Sensaが進行中である。英語で言えばCensusで国勢調査のことである。8月25日に始まり、9月4日終了予定。現在進行形である。ダルエスサラームではほぼ1~2日で終わるが、地方の交通手段のない村では、自転車や徒歩による調査だから時間がかかる。1988年以来、14年ぶり。本当は10年毎に行われれることになっていて、1998年の実施予定だったが、予算不足で見送られた。今回も政府の経済状況が好転したわけではないが、各国からの援助で態勢を整えた。日本政府も援助国に名を連ねている。
📷 今回はタンザニア独立以来4回目の国勢調査になる。1967、1978、1988年と以前は実施された。前回の国勢調査も私は経験している。当時はダルエスサラーム大学の近くのムウェンゲという地区、マコンデ村のすぐそばに、今はJATAツアーのマネージャーであるアレックスと一緒に家を借りていた。二人とも独身青年の時代である。国勢調査は8月の日曜日に全国一斉に行われる。禁足令ではないが、その日は自宅に留まるよう指示があり、調査員の訪れを待つのである。小学校教員の女性の調査員が訪れ、アレックスとお手伝いさんの聞き取りだけでなく、私の生年月日とか仕事とかを訊くので、質問に全部答えた後で「私はタンザニア国籍がないんだけど、調査が必要なの?」と訊いたら、何かビックリした顔をしていたような記憶がある。
さて今回の国勢調査。我が家には8月25日(日)調査員が訪れた。見たことのある近所のおばさんが、Sensaと書いた帽子とTシャツを被って訪れた。調査項目は、氏名、年齢、性別、身体障害の有無、国籍だけだった。宗教、民族の統計は取らなくなって久しいようだ(1988年にも調べられなかった記憶がある)。職業も訊かれなかった。身体障害に関しては初めての調査ではないか?調査票を覗き込んだわけではないから、本当のそれだけの調査なのか、地区によっては違う項目があるという噂があるが、真偽は定かではない。
我が家には住み込みのお手伝いさんがいるが、日曜日は休暇でダルエスサラームの叔父さんの所に行っていて不在。だけど、質問されたので答えたら、しっかり登録された。もし叔父さんの家に調査員が来たら、やはり登録されたのだろうか?そうしたらダブって人口が増えてしまうのだろうかと訝る。実際には彼女はダルエスサラームの叔父さんの家から、チャリンゼというダルエスサラームの西100kmにある実家に行っていて、そこでは調査されなかったと言っているから、ダブらなかったのだが…。逆に旅行中の人間は登録から落ちるのだろうかとも思う。ホテルやゲストハウスも調査されるということだが、全国一斉ではないから、微妙な誤差はあるし、登録されたくない人だっているだろうから、誤差はきっと大きいに違いない。
📷 実はタンザニアにおける国勢調査は独立前の1948年、1957年にも行われている。当時は人種(ヨーロッパ人、アジア人、アラブ人、アフリカ人)だけでなく、民族や宗教の調査もあった。独立後は理念からそういう調査項目はなくなっている。
今私の手元には1978年、1988年の予備報告書がある。人口は1,231万人(1967)、1,751万人(1978)、2,317万人(1988)と増加している。人口増加率は3.2%(1967-78)、2.8%(1978-88)。今回はさて何万人となるか?巷では3,500万人と言っているが。実際には調査漏れの人口が多いから、言われているほどの数字はでないかもしれない。1988年のダルエスサラーム州(市)の人口は136万人となっているが、その当時も既に180万人と言われていた。人口の多い都市はムワンザ(22万)、ドドマ(20万)、タンガ(18万)、ザンジバル(15万)、ムベヤ(15万)、アルーシャ(13万)、モロゴロ(11万)、シニャンガ(10万)が10万人を超えていた。
人口密度はずっとザンジバルのタウン西(ストーンタウンを含む州)がトップだったが、前回初めてダルエスサラーム州が抜いて1平方キロ当たり977人、中南部を除くザンジバルの4州が206~906人で、タンザニア本土には人口密度が100人を超す州はない。ムワンザ州86人、キリマンジャロ州83人が多いところ。少ない方は、リンディ州、ルクワ州(スンバワンガは州都)の10人、ルヴマ州(州都ソンゲア)12人、タボラ州14人と続く。
人口増加率は、ダルエスサラーム州が4.8%でトップ。2位はザンジバルではなくルクワ州の4.3%で、3位に 3.8%でアルーシャ州とザンジバル・タウン西で並ぶ。少ない方はムトワラ州1.4%、リンディ州2.0%と、開発の遅れている南部が挙がっている。南部出身のムカパ大統領登場の背景の一つであるが、今回はどうか?キリマンジャロ州が2.1%と下から3番目なのは、逆に開発が進んで土地不足というか飽和状態なのだろうかという気もする。
タンザニアの統計の取り方はいい加減で、今まで余り信用していなかったが、今回はどういう数字が出てくるか、ちょっと楽しみである。ただいつ報告書が出てくるかは当てにならないので、速報値が出たらご紹介したい。
(2002年9月1日)
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