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Habari za Dar es Salaam No.36   "Uchaguzi Mkuu 2005(2)" ― 2005年 総選挙(2) ―

根本 利通(ねもととしみち)

 ダルエスサラームは大雨季の只中にある。昨年11月の小雨季のころから雨量が多く、「今年は小エルニーニョだ」とタンザニア人が言っていたが、確かに多いように感じる。道路が一気に悪化するのは困りものだが、幾分でも涼しくなるのは助かる。

 さて、タンザニアの総選挙は10月だが、もうだいぶその事前の戦いに熱が入ってきたように感じられる。野党が非常に微力だから、与党CCM(革命党)の大統領候補に選ばれた候補が、ほぼ間違いなく大統領に当選するという現実から、CCMの候補選出が5月中ということで、それに向けての戦いである。

 現在CCMを含めて登録されている政党は18政党あり、2000年の総選挙時よりも5政党増えている。ただ、ムレマ(1995年総選挙の際の最有力野党大統領候補)を擁するTLP(労働党)のように、内紛で主要ポストが不在のために登録抹消の危機にある政党もあり、どれだけの政党が総選挙に参加できるのかは不明である。現在大統領候補や国会議員候補の選出日程を発表した政党はわずかに3党のみで、CCM、CHADEMA(民主開発党)、NCCR(建設改革民族会議)である。また大統領候補を出す予定の政党は、CCM以外はCUF(市民統一戦線)、CHADEMA、TLPとなっている。 野党統一候補の話し合いは進んでいない。

📷 焦点のCCMの候補選出日程は、3月1日から、連合政府とザンジバル政府の大統領候補申請用紙が配布され、4月15日締め切り、5月2日までにNEC(全国執行委員会)が、ザンジバル大統領候補1名と、連合政府大統領候補3名の推薦を決め、5月3~4日に予定されている全国党大会で決定されることになる。国会議員候補は8月の決定である。

   2月16日に各種の日程が発表になった。総選挙そのものは10月30日(日)と発表された。これは予想通り。選挙期間は長く、8月21日から始まる。各政党は8月20日までに候補者名を各選管に届け出ることになっている。

 選挙区が1つ増えた。ダルエスサラーム郊外のコースト州キバハ選挙区が2つに分割された。他にも選挙区の境界の変更や、名前の変更はあるが、選挙区数自体は前回より1つ増えただけで、合計232選挙区となる。問題はザンジバルの選挙区の区割り変更である。定数50は変更ないものの、従来ウングジャ島29、ペンバ島21と分けられていたのが、今年はウングジャ島32、ペンバ島18と増減があった。2002年の国勢調査の数字が正しければ、人口比率は63:37なので妥当な線であるが、ペンバ島では2001年の暴動・野党支持者の弾圧で、多くの野党(CUF)支持者が島外に逃れており、CUFは「不当な区割り変更」と抗議している。ペンバ島はCUFの強固な地盤であり、CCM有利の変更であることは間違いない。

 さて焦点の大統領候補であるが、現在CCMで正式に立候補表明をしているのは、以下の11名である。指名申請用紙を取りに行った順に掲げる。

氏名年齢出身現職経歴ジョン・マリチェラ70ドドマCCM副議長首相、副大統領アリ・カルメ54ザンジバル駐ドイツ大使駐ベルギー大使フレデリック・スマイエ54アルーシャ首相農業畜産相マーク・ムワンドスヤ55ムベヤ通信運輸相ダルエス大学教授サリム・サリム63ザンジバルニエレレ財団理事長OAU事務局長、首相アブダラ・キゴダ54?タンガ計画民営化相エネルギー資源相ジャカヤ・キクウェッテ54コースト外相蔵相、エネルギー資源相イディ・シンバ69キゴマ国会議員通産相、アフリカ開発銀行理事パトリック・チョカラ57シニャンガ駐ロシア大使大統領広報官ウィリアム・シジャ57ムワンザ国会議員通産相、エネルギー資源相マガレ・シブダ55シニャンガ会社役員NECメンバー(両親)

 これ以外にも、シェイン副大統領などが噂に上っており、未だ指名希望者は増えそうである。ただ、指名申請用紙を受けとった候補は、タンザニアの全26州の内の10州(内2州はザンジバル)から、250人の推薦人署名を集めなくてはならず、今全国を遊説中であり、必要な署名を集めきって、CCM本部に提出したのは、現在のところマリチェラ元首相とキクウェッテ外相の2名のみである。ザンジバルでの署名集めが各候補にとって負担になるかもしれない。

 上記の11名の内に、ザンジバル出身者が2名。またムスリムは5名、クリスチャンが6名である。  📷 タンザニアの過去3代の大統領が、本土(クリスチャン)→ザンジバル(ムスリム)→本土(クリスチャン)と来たので、次はザンジバルからという期待もないわけではないが、これには拘束されないことになっている。本土出身のムスリムということで、キクウェッテが本命視されることもあるが、この場合副大統領がザンジバル出身者になるので、正副大統領ともムスリムになる確率が高いので、これも決め手にはならないだろう。

 前回はムカパ大統領に対抗馬が現れなかったから、実際に指名を争ったのは、1995年のことである。その際には17名の指名立候補者がいたが、有力とされたマリチェラ首相兼副大統領(当時)は、最終3名の候補にも残らず、下馬評の低かったムカパ外相(当時)が指名された。ニエレレ元大統領の裁定と言われる。当時無念の涙をのんだマリチェラCCM副議長は、今回はキングメーカーに徹すると予想されていたにもかかわらず、真っ先に指名申請書を受け取り、野心の衰えないことを示した。年齢を指摘されると、ケニア、ナイジェリア、セネガルの大統領の年齢を挙げて、自分は未だ働き盛りであると反論している。

 スマイエ首相はムカパ政権10年間首相を務めた立場から「ムカパ政治の継承」を掲げ、ムカパに支援を仰ごうとしている。キクウェッテ外相は10年前も若手のホープとして、最終候補者に残った自信もあり、知名度は高い。ただこの2名には庶民性に疑問が付いている。サリムは国外では有名だが、タンザニア国内での人気は今一つで、やや過去の人のイメージがある。

 ともあれ、2004年には政府高官による汚職が蔓延してきたという報告もあり、また党の全国大会で、代議員の買収が囁かれるなど、やや金銭選挙の様相を示しだしている。各指名候補者が地方でキャンペーンを張る際に、資金パーティーを各種の名目でしているのだが、数千万シリングは簡単に集まる状況である。

 なおザンジバル大統領候補であるが、CUFは三度セイフ・ハマド(61)を立てる態勢である。CCMは現職のアマニ・カルメ大統領(56)と、前アムール大統領政権下でザンジバル政府主相を務めたモハメッド・ビラルが申請用紙を受けとっている。CCMの分裂が回避できるかどうか、注目される。

 選挙人登録は、ザンジバルや南部州(ムトワラ)などでは終了し、3月29日から4月18日までの期間でダルエスサラーム州、コースト州、モロゴロ州で行われている。登録所の担当は小学校教員なので、この間公立小学校は休校になっている(ただし全国試験を控えた4年生と7年生は、「有料」授業続行中)。ダルエスサラームでも野党の強いキガンボーニやテメケ選挙区では、緊張感がある。ザンジバル南部県では、見込み数より1万人以上も多い登録があり、野党(CUF)から「水増し」という批判を受け、ザンジバル選挙管理委員会が反論している状況である。

(2005年4月1日)

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