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Habari za Dar es Salaam No.59   "Africa-Asia Business Forum" ― アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム ―

根本 利通(ねもととしみち)

 2007年2月12日~14日、ダルエスサラームのキリマンジャロ・ホテルで、第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF Ⅳ)が開かれた。主催は日本政府、アフリカのためのグローバル連合(GCA)、国連アフリカ担当事務総長特別顧問室(OSAA)、国連開発計画(UNDP)及び世界銀行で、協力が日本貿易振興機構(JETRO)、国連工業開発機関(UNIDO)だった。

 日本で開かれているTICAD(アフリカ開発会議)の運動の延長線上にあり、アフリカの開発のためにアジア諸国との貿易を盛んにしようという目的らしい。1999年に第1回のフォーラムがクアラルンプール(マレーシア)で開かれたが、第2回はダーバン(南ア)、第3回はダカール(セネガル)で開かれ、第4回は東アフリカにお鉢が回ってきたが、ナイロビではなくダルエスサラームになったというのはなぜかは知らないが、おかげでホテルの部屋数が一時的に足りなくなったそうだ。

📷  12日朝の開会式にはキクウェッテ大統領が出席した。キクウェッテのスピーチの前に、タンザニアの産業貿易相から始まり、国連の調整官、NEPAD、UNDP、UNIDO、AU代表、日本の外務政務官など7人もスピーチを行い、その中でUNIDOの代表(日本人)が、ナイルパーチのEUへの輸出に触れ、ヒヤッとさせられたが、キクウェッテは無関心そうに見えた。

 キクウェッテは慣れているせいか、スピーチも分かりやすく上手で、聴衆を湧かせるコツも心得ていた。アフリカからアジアへの輸出は、全アフリカの輸出の15%を占めるに過ぎないが、年々の伸び率10%は平均を上回っている。アフリカの豊かな天然資源はまだまだ未開発で、アジアの技術・経験を生かして、パートナーシップを深めたいという趣旨のスピーチだった。「アフリカの未開発の豊かな天然資源」とはよく言われる言葉だが、所詮は尽きる物なのではないだろうか…私自身が生きている間はいいけど、このまま資源開発・消費がどんどんスピードアップしていったら、今は点いているこの電気もいつかは切れるのだろうかと夢想に耽ってしまう。

 その後、お茶の小休止後に日本人パネリストのセッションに入った。セッション1はJICA、JBIC、JETROといったいわば日本の援助の公的機関の活動紹介が続いた。JICAとJETROは「一村一品運動」を紹介していた。ケニアのサイザルバッグなどが例に挙げられていた。日本国内でも、成田、羽田、伊丹などの空港で見られる。タンザニア産のイリンバ(親指ピアノ)などが並べてあるのを見たことがあるが、ちゃんとした楽器ではなくいわゆるお土産物で、ある特定の村の特産品が出回っているとは思えなかった。日本の大分の農村で始まった運動なのだろうが、そして将来的には魅力的なプロジェクトだろうが、アフリカではまだまだだろう。少なくともタンザニアで村起こしにつながるには、もう少し練らないといけないかもしれない。

📷  朝の8人の開会スピーチが長引いたせいか、質疑応答がなくすぐセッション2に移る。セッション2は日本企業のアフリカにおける活動の紹介である。まずJETROの南ア所長が日本企業のアフリカにおける活動を概観し、その後個々の企業が自分たちの活動の紹介をした。参加したのはTCC(タンザニアタバコ)、M商事、I商事、S化学の4社であった。

 TCCはJTの子会社であるJTI(日本タバコ国際)が75%株を持っている子会社である。元はイギリス系のBATという会社が、タンザニアの社会主義化に伴い公社化されていた。1995年民営化の波に乗ったが、経営がうまくいかずに1999年JTに買収されたという。主にタンザニアから南部のアフリカを市場として展開している。「企業の社会貢献」というのを他の日本企業は強調していたが、TCCに関しては、私たちは実際に知っている。日本からスタディーツアーに来た方々に紹介している元ストリートチルドレンの収容ホームでは、音楽、美術、スポーツなどの課外活動を行っているが、それはTCCから援助を受けている。

 日本を代表する巨大商社の2社のプレゼンテーションはなかなか商社らしかった。企業の社会貢献、環境に優しいということを強調する。2社ともノーベル賞受賞者のケニアのマータイさんのことを積極的に引用しつつ、「MOTTAINAI精神」を紹介しているのが面白かった。高度成長期には積極的に生産・消費を推し進めることで利潤を確保してきた商社が変わったのか、一部では環境保護やリサイクルを取り入れざるを得ないのが時代の要請なのか。I商事は風呂敷の活用も言っていたが、フロシキバッグという新製品(これはI商事とは関係なし)が伸びることを暗示しているだろうか?⇒

 もう1社のS化学は、マラリア対策の蚊帳「Olyset」の生産のことを語った。マラリアはアフリカで大きな発展への障害物であり、それに対する長持ちする蚊帳の普及は望ましい。タンザニア企業に特許無償で提供し、生産をしている努力には頭が下がる。わずか$5程度でもタンザニア農民にとっては大きな負担というか、不要不急な支出と見なされるだろうが、幼い子どもたちがマラリアで亡くなることをいかに防ぐかは優先度の高い課題だろう。でも一方で企業は儲けないといけないし、化学肥料の記憶もある。「企業の社会貢献」のみを全面に押し出すことは可能なのか…とも思う。 

📷  会場には14~15ののスタンドが出ていて、パンフレットや商品を展示、販売していた。タンザニアだけでなく、ジンバブウェなどからの参加企業もあった。アジアからの参加企業との面談が行われ、ビジネスチャンスがこの3日間提供される。その中で私が注目をしたのはムビンガ(Mbinga)コーヒーのスタンド。翌日の「Daily News」の第一面のトップ記事は、この日キクウェッテ大統領が訪れたムビンガ・コーヒーのスタンドの写真だった。

 ムビンガはタンザニアの南部、マラウィとの国境に近い県である。10年以上前からタンザニアの農業大学と、日本の大学とで「持続的農村開発」の共同研究が行われ、その後JICAの支援が付いて、専門家や協力隊員が派遣された。様々な活動、農村の中の自発的グループ、女性グループなどが生まれたが、目に見える形で出て来たのがこのムビンガ・コーヒーかもしれない。

 会場で販売していたムビンガ・コーヒーは50gのインスタントコーヒーと、100gの焙煎済みの挽いた豆。インスタントコーヒーは、ロブスタ種ではなく、100%アラビカ種であることが売りだが、それがインスタントとして高級であるのか、もっと言うとおいしいのかは議論が分かれるかもしれない。タンザニア産のインスタントコーヒーとしては、先行していて日本でも販売され定評のあるAfricafeが1,700シリング、Tanicaが1,400シリングで市販されているのに対し、会場ではMbinga Cafeは1,000シリングで売られていた。タンザニア国内ではこの格安感は大きな武器だが、国際市場では知名度、流通、美味しさなどがポイントになっていくだろう。缶のデザインも渋く、果たして日本などに進出できるだろうか。日本人が生産・販売に関わってきたMbinga Cafeの健闘を祈りたい。日本国内は、たしか楽天市場で入手可能なはずだ。⇒

(2007年3月1日)

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